ブランディングのデジタル化 その1

デジタルマーケティングと言われて久しい。
30年マーケティングに携わってきた者とすれば、なにを今更という思いはある。ただ、マーケティグのベースが「顧客を知る」ということであるならば、確かに顧客情報の精度は30年前とは天と地の違いがあることは確かである。

旧来のマーケティングの顧客を知る手段は調査であった。街頭調査、CLT、電話調査を多様したものである。今はたぶんそれらの標本手法はネット調査になっている。まあ、旧来手法、ネット調査どちらがいいというわけでもなく、誤差率もほぼ変わらないなら「価格」が安いほうがいいに決まっている。

昨今の流行は、データである。ポイント事業者、キャリア、通販会社、流通のPOS・・・などが持っているデータであり、これが凄いのは、標本ではなく全数でデータが見られる。また、ID化も進んでいるので、個人に紐づけた分析ができるところも頼もしい。例えば、「コカ・コーラを買っている人は?」という質問に対してID-POSのデータでみれば、あくまで例示であるが、「15~19歳代の男性、平日の16:00~18:00が購入が多い時間帯」・・・などなど情報を掴むことができる。ではなぜ、その時間が多いのか?ここから先は仮説として、これも例えばサンドイッチと一緒に購入しているというデータがあったとしたら、夕食前の小腹を満たすためにサンドイッチを買って、その時にのどを潤すのがコカ・コーラなのか!という動機が見え、そこから、ならばもっと拡販するために、「コカ・コーラとサンドイッチのセット販売」をしようということになる。そして、その情報を16:00前にスマホに配信しよう、と。まあ、このあたりは言うまでもない分析と行動である。

私は、デジタルマーケティングというよりも「マーケティングのデジタル化」という方が期に行っている。先ほども指摘したとおり、決して新しい発想があるわけでなく、顧客を知る手法、顧客にアプローチする手法、顧客を管理する手法がデジタル化し、この一連の流れがデジタル化によってシームレスになったまでだからである。

ペルソナという言葉があるが、これは「ターゲットプロファイル」と以前は言っていたし、カスタマージャーニーも「ターゲットアクションマトリックス」と呼んでいた。

さて、前置きが長くなってしまったが、「ブランディングのデジタル化」はあるのか?という話である。顧客を知ること、顧客を管理すること、これらはブランディングにおいてもデジタル化されたほうがいいに決まっている。問題は「顧客アプローチ」である。シームレスな流れのなかでデジタルツールのタッチポイントでブランド体験ができるか?という視点が一番重要である。
トリバゴ」は確かに便利であるが、「安いを見つけるツール」であり、これは機能価値でしかない、もっと「安いが見るかる」ものがでてきた時に、駆逐されてしまう。つまり、ブランドは機能価値だけでなく、「好きになってもらう」ための情緒価値が必要なのである。
この情緒価値になるとデジタル(ディスプレイ)は途端に弱くなると思う。これは情報接触の態度からなのだろうか?ディスプレイのタッチポイントとしての特性は、
①能動的タッチポイント
②鮮明な色使い(表現力)のタッチポイント
③即時対応性(見たいときにいつでも)のタッチポイント

なんだろう?新聞も能動的なものではあるが、読み手の態度としての情報を探すというより、教えてもらうイメージが強い。テレビ(CM)も表現力豊であるが、見る側の態度として飛ばすことができず、自然にみてしまう。即時対応性は便利ではあるが、特別な体験を生む(ブランド体験)としては逆に足かせになる。

そう考えるとデジタルでの「情緒価値」というものに無理があるのかもしれない。例え、オウンドメディアで「情緒価値」を伝えるコンテンツを作ったとしても、やはり、情報接触の態度はそれを醸成できるものならないのではないかとさえ思う。

ブランディングのデジタル化・・・もっともっと突き詰めなくてはならないが、今日はこの辺りにしておくことにする。