デジタル広告とブランディング

以前、ブランディングのデジタル化をテーマにしてみたが、今回はもう少し突き詰めデジタル広告とブランディングを検討したい。

 

マーケティングにおいてデジタル化は、「顧客を知る」 という点において理想的な姿である。顧客データを分析し、対象商品やサービスを購買するであろう層に対してデジタルメディアでアプローチする。アプローチするメディアは、バナーに代表されるPull型もあれば、メール広告のようなPush型もある。

マスマーケティングは、「投網型コミュニケーション」と言われるように、獲物がいそうな場所を特定しそこに網を投げ入れ、収穫をする手法である。このアプローチとデジタルのアプローチの比較で語るなら、魚群レーダの高度化し、狙った獲物が確実にいるピンポイントの場所を特定、そこに「多数の針がついた仕掛けを投げ入れる」イメージとなろう。「いかに無駄な広告費を使わないか」がデジタルの前提なのである。さてその効率性は本当はどうなのであろうか?

CPMという指標がある。
Cost Per Milleの略であり、「1000人の人が広告に接したときのコスト」である。それを見てくと、
SNS広告     :30円
運用型ディスプレイ:100円
予約型ディスプレイ:400円~800円
TVCM(30秒)  :500円
上記は参考数字である。

確かに広告効率という観点では、デジタルに一日の長があるように見受けられる。また、Clickの先に購買があるというCVへの直結性においてもデジタルは強い。

では、オフラインの代表であるTV広告はどうであろうか?まず、CV直結性はTV広告にはない。CPMも高い。「広告としていいところがないのではないか」、というのがデジタルの人たちの意見である。ではなぜGoogleAmazonがTV広告をやるのか?

これは仮説ではあるが、市場拡大という価値をTV広告に担わせているのではないだろうか?オンラインは効率を追求するため接触が限定される、これは一本釣り的なリスティングは顕著であり、潜在ニーズの発掘などできるはずもない。ディスプレイ広告も表現の安易さがあり、「気づき」まで到達できるとは思わない。つまり、TV広告は「投網型」であるが故に、投げた網の中に「思ってもいないような獲物」が入ってくるという考えである。もちろん、新たな獲物を得るためにあえて投げ入れる「投網」もあるかもしれない。それは新たな市場を切り開く行為である・・・。
ではそれがデジタルではできないかというとそれはそのようなことはない。これだけのディバイスが広まっているなか、情報接触としてはデジタルのオールターゲティングはマスメディアに引けをとらない。ただ発想を変えなくならないのは、CVを追い求めないことだ。CVを追い求めるとそれは「チラシ」と同じメッセージとなり、Clickの数を追い求めることだけになる。それでは市場は広がらない。狙うべきはClickの質である。
ある意味、到達させたメッセージに興味を覚える人を探し、捕らえるという発想である。これはこれまでのデジタルのニーズのある人に対してメッセージをあてるという行為とは全く異なるものである。

さて、ここにきてブランディングに話しを移そう。質の高いClickを得るためには、メッセージに対する「共感」が必要になる。それがデジタルの面への掲出だけでできるかと言えばそんなことはない。接する人が、「面白い」「なるほど」と思われるような展開が求められる。話題になるような展開でなければインパクトはない。例えば、多元的な面を使ったマルチメッセージによって「伝えたいことが伝わる」ようなこと、それがSNSで拡散されるような仕掛けを連続でおこなうようなことができれば、Clickの質は確保されブランディングにもつながる。
ただしその大仕掛けに必要なコストを考えれば、やはりTV広告で・・・という結論になるのかもしれない。だが忘れてはならないのは、「デジタルは顧客を可視化」できるということであり、その先のCRMを含めた設計ができたなら、そのコストは決して高くはならないと考える。