それぞれのブランド戦略

トヨタのCMのエンディングから企業ロゴとショルダーコピーがなくなっている。気が付いたのは1年前ぐらいからであろうか?記憶にあるのは「Drive Your Dream」・・・きっともっと別のものがあったとも思うが・・・。

ブランディングという作業にとって、企業ロゴのショルダーコピーはブランドプロミスを示す役割としてとても重要である。

ブランドとは、企業が市場に対して約束すること、約束し続けること、その約束を行動に移し、そこから評判が生成されるところから発生する。ゆえに、ショルダーコピーはブランド戦略が集約化したものであると捉えることができる。

さて、話をトヨタにもどうそう。TVCMから企業ロゴとショルダーコピーが消えたこと、それはすなわち日本の市場で「企業ブランド戦略をやめた」ことを意味するはずである。

企業ブランド戦略とは、企業の記号(ここではロゴ)に評判を蓄積し、その企業の部ブランドの傘の下、その文脈にもとづき商品ブランドが展開される構造である。

トヨタでいうなら「Drive Your Dream」~あなたの夢を運ぶ、トヨタです~という「ブランドプロミスのもと、さまざまな車種がそれを実現する「クルマ」として位置づけられ、性格づけがされる設計になる。もちろん、その「夢」を実現するための技術訴求、例えばハイブリッドカーのような、が企業ブランドを推し進める一助となる。そのなかで、いろいろなユーザーの夢(もしかしたらシーン)に対応する多様な車種という応えを用意するのだ。また、車種のメッセージがブランドプロミスの行動となり具体性を帯びることで評判化し、企業ブランドをさらに強いもにする。それがまた別の車種をエンドースメントする。

いうならば、企業ブランド戦略とは、ブランド連鎖戦略とも言える。

さて、企業ブランド戦略をやめた、であるなら、たぶん車種ブランド戦略にシフトさせたということが言える。企業ブランドという「ブランド連鎖」の要を外し、個別のブランド力で勝負する決断をしたようだ。それは「レクサス」「ネッツ」のようなチャネルと車種(群)を統合したブランド戦略、カテゴリーブランドとでもいうのか?にシフトさせたともとれる(それにあてはならない車種はどうするのか?)。

この背景になるのは、ひとつに日本という国においてトヨタブランドを推し進めることの無意味?さ、があるのかもしれない(日本においてトヨタはあまりにも大きな存在であるが、市場としては決してオイシイモノではなくなている)、また、ダイハツ、スズキ、スバルとの提携戦略が進むことで、あえてトヨタ企ブランドを露出させない選択をした可能性もある。また、内部要因として車種やカテゴリーを推進する力が強くなっているのかもしれない(それは逆の意味では統制力の疑問となる)。

いずれにせよ、トヨタの企業戦略が曲がり角にきていることが、企業ブランドを訴求をやめたことから垣間見れる。

さて、日本におけるライバル日産はどうか?相変わらずの「やっちゃえ、日産」という企業ブランド訴求、戦略の選択肢が分かれたと見るのは私だけか?